[ゼロから始めるプロジェクトマネジメント] プロジェクトでメンバーが何を得られるのかを気にかけよう
情報システム室の進地@日比谷です。
プロジェクトが始まるとPMはそのプロジェクトの成否だけにフォーカスしてしまいがちになります。今回は、その弊害とメンバーがプロジェクトで得るものに心を砕くことの意義についてまとめます。
そのプロジェクトだけしか見えなくなることの弊害
貴方がPMとして責任感をもってプロジェクトに向き合えば向き合うほど見えなくなるものがあります。それはそのプロジェクトの成功の周りにあるものです。
- そのプロジェクトはどうして必要になったのか?
- そのプロジェクトの成否は周囲に何をもたらすのか?
- そのプロジェクトは
本当に成功させないといけないものなのか?
プロジェクトは何もない空間から急に生まれるものではありません。必ず、それが必要とされた前段、歴史があり、期待される成果があります。前提と期待があるわけです。
担当しているプロジェクトにのみ視点がフォーカスすると、この前提と期待を見過ごしやすくなります。状況や環境は常に変わります。平家物語が諸行無常と教える通り、移ろわないものなどないのです。状況によってはそのプロジェクトは失敗させることが最適解の場合もある
のです。
単一のプロジェクト、貴方はそれを「私のプロジェクト」と認識しているかもしれません。その誠実さ、責任感には敬意を払いつつも、もう少し突き放して見ることをお勧めします。人間と同じように、プロジェクトも単一のプロジェクトで成立しているのではなく、周囲との関係性のなかに存在しています。関係性が変われば、求められるあり方も変わります。その意味では、PMは常にプロジェクトが置かれた立ち位置に気を配る必要があるのです。
結果として、「私のプロジェクト」の成否だけにフォーカスすると、他のプロジェクトから人員を無理に引っ張り込んだり、プロジェクトメンバーに無理を強いたり、私生活を犠牲にしたりといったことが発生するようになります。あまり良くないですよね。もっと肩の力を抜きましょう。
プロジェクトが終わってもメンバーの人生は続く
とても当たり前のことなのですが、プロジェクトが終わってもプロジェクトメンバーや関係者の人生は続きます。各々がさまざまなバックグラウンドを持ち、さまざまな目的を持ち、課題や縁を持って懸命に生きています。「私のプロジェクト」が貴方にとってどれほど重要に感じられていたとしても、こうした人々の人生を破壊したり、ないがしろにしていい理由にはなりません。
むしろ、このプロジェクトによってメンバーが何を得られるのかに気を配りたいところです。
- お金
- 経験
- 専門的な知識
- 信用・評判
- 実力を高めた居心地の良いチーム
- ステークスホルダとの良好な関係
- etc
PMがこれら全てに責任を負うことはできませんし、負う必要もありませんが、これらを得る究極の土台を提供することはできます。それはメンバーの心身の健康状態に気を配り、健康な状態で過ごせるようなプロジェクト運営を行うことです。PMがデスマーチを回避しなければいけない大きな理由がここにあります。
続けること、続けられることの価値
心身が健康でありさえすれば、メンバーは自律的に学び、得たいものを得て成長してくれます。結果として、次のプロジェクトにも参加してくれる可能性が高まり、そのメンバーがプロジェクトに与えるプラスの効果は高まり続けていくのです。
単一のプロジェクトだけに集中した世界観を持つのではなく、多数のプロジェクトや人が関わり合いながら連続して、続いていく世界観をイメージするようにしましょう。決して、目の前のプロジェクトと心中したり、心中させたりしないようにしましょう。プロジェクトからプロジェクトへと続けること、続けられることが結果として大きな成果をもたらすことにつながります。
Who goes slowly goes far.(ゆっくりゆくものがとおくまでゆく)
ゆっくり進まなければ続けられません。無理をしないことは遠くまで行きたいなら必須要件です。
縁あって同じプロジェクトで働くことができるメンバーに感謝し、悲喜交々を共に味わい、プロジェクトを楽しみましょう!