【セッションレポート】 NRF2025: スターバックスとリーバイスのDX #NRF #NRF2025
はじめに
こんにちは、濱野です。NRF 2025: Retail's Big Showのセッションレポートをお送りします。
NRF 2025: Retail’s Big Showとは何かについては、
「小売業年次イベントである「NRF 2025: Retail’s Big Show」の基調講演に参加しました」
を参照ください。
セッション概要
さて、今回参加したセッションの概要になります。
Digital transformation: Insider insights from Starbucks and Levi’s®
Get ready to dive deep into the world of digital transformation with two retail powerhouses, Starbucks and Levi's®. These iconic brands are driving fundamental change using cutting-edge technologies throughout their operations to revolutionize their business models and unlock unprecedented value. From boosting efficiency and enhancing agility to creating new opportunities for employees, customers and shareholders, these leaders will share their transformation journeys in detail.
日本語訳(Claude 3.5 Sonnet)
デジタルトランスフォーメーション:スターバックスとリーバイス®の内部からの洞察
スターバックスとリーバイス®という2つの小売業界の大手企業とともにデジタルトランスフォーメーションの世界に深く踏み込みましょう。これらの象徴的なブランドは、最先端のテクノロジーを事業全体で活用し、ビジネスモデルを革新し、かつてない価値を引き出すための根本的な変革を推進しています。効率性の向上や俊敏性の強化から、従業員、顧客、株主のための新たな機会の創出まで、これらのリーダーたちが自社の変革の軌跡を詳しく共有します。
本セッションでは、スターバックスCTOとリーバイ・ストラウス&カンパニーのCDOを迎え、各社がどのようにDXに取り組んでいるか、内部関係者の視点から紹介されました。
登壇者
- Dr. Janet Sherlock - Chief Digital & Technology Officer (former) • Ralph Lauren
- Deb Hall Lefevre - Executive Vice President, Chief Technology Officer • Starbucks
- Jason Gowans - Senior Vice President & Chief Digital Officer • Levi Strauss & Co.
セッション内容
※以下ではTechnologyと語られたところを、ニュアンス的に少し異なる可能性ありますが、「技術」と記載しています。
スターバックス社の取り組み
スターバックスCTO Deb Hall Lefevreさんより、スターバックス社のデジタルに対する取り組みが紹介されました。
まず、技術チームの目的(Purpose)は、
「全世界で一貫して優れたスターバックス体験を提供するためにパートナーに力を与え、鼓舞する」
”empower and inspire our partners to deliver a consistently great, unique Starbucks experience anywhere across the globe”
であると紹介されました。
これを達成するために、以下の5つの指針(5 Principals)を掲げられています。
- Global Mindset : グローバル展開可能なソリューションを構築し、効率化・スピードを達成する。
- Scale Agility : 86カ国40,000店舗のデジタルイノベーションを可能な限り迅速に進めることのできる”Smart Architecture”(=標準化)構築する。
- Value-Driven : 投資について成果を重視する。
- Reliable Technology : 店舗のパートナーが使いやすく信頼性の高い技術を採用する。
- Employee Growth : 技術系パートナー(従業員)に成長と新技術に携わる機会の提供する。
具体的なアクションとして以下が挙げられました。
- Technology Modernization : 北米だけではなく、グローバルでの技術の簡素化、標準化、モダナイズ(近代化)を実行。
- Unified Tech Stack : 直営ではないライセンス先の店舗であっても、ドライブスルーや空港などであってもその顧客は気にしない(区別しないし/できない)ので、グローバルに一貫した店舗体験を提供できるよう、技術スタックを統一していく。
上記を通じて、以下を実現していくことが述べられました。
- パートナー(Green Apron)のエンパワーメント : 使いやすく、信頼性高く、安全な技術を使うことで、技術による混乱(煩わされることなく)、ドリンクを作るなどサービスに集中できるようにする。
- ユニークな顧客体験の実現 : 「Back to Starbucks」に従い、熟練したバリスタによる温かく居心地のよい環境への取り組みにより、スターバックスのユニークな体験を提供してく。一例として店頭注文4分以内、モバイル注文12分以内(ピーク時には40%に達する)を目標に注文のアルゴリズム改善に取り組んでいる。
Levi's社の取り組み
リーバイ・ストラウス&カンパニーのCDO Jason Gowansさんより、Levi's社の取り組みが紹介されました。
まず、ビジネス全体として、
- DTC優先(DTC first Ambition)を掲げ、メンズデニムの卸売業から世界クラスのオムニチャネル小売業となるべく推進中。
- DTCは10四半期連続成長中であり、DTCと卸売が凡そ半々の状況。
- デジタルトランスフォーメーションとしては、DTCファーストの戦略をカバーしながら卸売を拡大する(会社全体の再構築も意味する)
といった状況であるることが語られました。
次に、3つの注力分野(3 value streams)として
- Consumer Experiences
- Employee Experiences
- Platforms : 特にデータが重要であり、その整理と活用に集中
が挙げられました。
更に、具体的な取り組みが紹介されました。
- 生産 : トップスの95%は3Dツールを用いてデザインされている。
- EC : 2年以上に渡り、3つの取り組みを実施。
- "Focus on Fundamentals" : 地道なファネル(サイト訪問->カート投入->購入)の理解と改善。直近約2年で40-50%の速度改善、閲覧率10%改善を達成。
- 品揃えの継続的な改善
- Digital Flagship Experience : リアル/オンライン問わずパーソナルで最上級の対応を提供する。Red Tabプログラム(3,700万人のファンが存在)の活用など
- 店舗 : 自社で構築した”BackPocket”ツールを使って顧客を理解(360ビューを提供)し、在庫の可視化、好みのスタイリングの推奨、宅送や客注を行うことができる。
DXに関する他社へのアドバイス
スターバックスCTO Deb Hall Lefevreさんからのアドバイス
- 基本的なことに集中する : 新しい技術の前に強固な安定したインフラが必要
- アーキテクチャ : スピード、スケール、信頼性担保のために強固なアーキテクチャが必要(コンポーザブルアーキテクチャ、モジュール化、サービス指向アーキテクチャなど)
リーバイ・ストラウス&カンパニーのCDO Jason Gowansさんからのアドバイス
- 実際に問題に取り組むときに、解決しようとしている明確なビジネス上の問題(=スポンサーがいること)を確認し、小さなことから始めて、課題解決を繰り返しながら範囲を拡大してくべき。
- 基礎を正しく理解するために少し時間を取るべき。自社で該当したのは、価格・プロモーション・市場の最適化・プロモーションの最適化であり、それをグローバルに拡張できるようにするには、すべてのデータをグローバルにスケールできるよう適切に配置する必要があった。
- どこに注力すべきなのか、どこに従えばよいのかを明確にすること。私たちは、画像の最適化や DC の最適化、その他すべてのことに重点を置きたいと考えていますが、実際には、お客様が私たちにリーダーになってほしいと望んでいるのは、サイズとフィット感(スタイリング)に関するものです。
考察
スターバックスとリーバイスという有名ブランドの内部関係者による注目すべき講演だけに、非常に聴衆の多いセッションでした。
スターバックスにおいては、非常に多くの国で、多様な形態(ライセンシーや業態)があるものの、お客様はそれに関わらず(知らないので)、統一された顧客体験を期待されるかと思います。その期待に対し、各国の文化の違いも考慮しながら、顧客及びパートナーにどのように仕組みを提供していくのか、あるべきアーキテクチャはグローバル統一であるべきか/各国でカスタマイズ余地をどれほど残すのか、議論は絶えないと認識しています。
また、Levi'sにおいては、従来卸売イメージが強かったところから、随分DTCが伸長してビジネスそのものが変化しており、取り組まれている視点や課題がDTC/小売の持つものと同じだと感じました。
いずれにせよ、ITの現場にいると忘れがちな、ITを使うことによるビジネス上の達成したい目的(Purpose)を改めて意識し、それに向かって更にスピードを上げて対応できるようにしていく必要があるなと感じました。