[書評]「解像度を上げる」 – ふわっとした課題感。ふわっとした解決策から脱却するための解像度を手に入れる
こんにちわ。従業員体験( EX )の向上がミッションのエンジニアリング統括室に所属しているてぃーびーです。
組織開発におけるアンチパターンとして、
- 「ふわっとした課題感」のまま取り組む
- 「ふわっとした解決策」を実施する
があります。これは、言い換えるのであれば
- 取り組む課題に対する解像度が低い
- 取り組む解決策に対する解像度が低い
状態です。
こういった状態を避けるために、課題と解決策に対して解像度を高くしていく必要があります。
書籍「解像度を上げる」では、この解像度について詳細にまとめています。
書籍情報
目次
- 第1章 解像度を上げる4つの視点
- 第2章 あなたの今の解像度を診断しよう
- 第3章 型を意識しながら、まず行動からはじめて、粘り強く取り組み続ける
- 第4章 課題の解像度を上げる―「深さ」
- 第5章 課題の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
- 第6章 解決策の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
- 第7章 実験して検証する
- 第8章 未来の解像度を上げる
概要
解像度とは、対象となる物事への理解度の高さである。
第1章 解像度を上げる4つの視点
解像度には4つの要素がある。
- 深さ - 原因・要因・方法を細かく具体的に掘り下げることができる
- 広さ - 原因・要因・方法を多様に検討することができる
- 構造 - 広さや深さの要素をカテゴライズ、階層化し、関係性や重要性を把握できる
- 時間 - 経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉えることができる
例えば、採用について考えてみます。
- 深さ
- 選考手法
- 面接
- 構造化面接
- 設問
- 評価基準
- 質問方法
- 構造化面接
- 面接
- 選考手法
- 広さ
- 選考手法の種類
- 構造化面接
- 非構造化面接
- ワークサンプルテスト
- 認知的能力テスト
- 選考手法の種類
- 構造
- 選考手法
- 構造化面接
- 有効度 - 5
- 準備コスト - 4
- 非構造化面接
- 有効度 - 3
- 準備コスト - 3
- ワークサンプル
- 有効度 - 5
- 準備コスト - 5
- 構造化面接
- 選考手法
- 時間
- 採用プロセス
- 認知
- 興味
- コンタクト
- 選考
- 内定オファー
- 内定承諾
- 採用プロセス
第2章 あなたの今の解像度を診断しよう
どのように自身の解像度を確認するか?
- 深さのチェック
- 細かく具体的に話せるか?
- 広さのチェック
- 広い選択肢を知っているか?
- 構造のチェック
- 対象について簡潔に説明することができるか?
- 対象についてユニークな洞察があるか?
- 時間のチェック
- 達成までの道のりを時系列で説明できるか?
例えば、今あなたが関わっている主要業務についてそれぞれの観点を元に詳しく説明できるでしょうか?
第3章 型を意識しながら、まず行動からはじめて、粘り強く取り組み続ける
どのように解像度を高めるか?
- 行動する
- 行動することで解像度を上げる。体験を通して実感を伴った思考を手に入れる
- 粘り強く取り組む
- 時間を十分にかけて取り組む
- 型を意識する
- まずは型に沿って始める。新たな型を作る場合も守破離の流れにする
雑感
書籍では触れられていませんが、これらの土台には「定期的なふりかえり」があると効果的でしょう。
単に行動をしても、対象について振り返らなければ記憶すべきポイントに気づかずに通り過ぎてしまうかもしれません。
第4章 課題の解像度を上げる―「深さ」
課題と解決策の関係について考えると、課題の解像度が重要である。
課題の重要度以上の価値は生まれないから。
良い課題には3つの条件がある。
- 大きな課題である
- 合理的なコストで解決できる課題である
- 小さな課題に分割して実績を出しつつ進める課題である
「深さ」の観点で課題の解像度を上げる方法について。
解像度を上げるための行動には、内化と外化がある。
- 内化は知識を習得したり、理解する活動
- 外化は書いたり、話したり、発表することによる理解を表現する活動
内化の具体的な行動例は以下。
- サーベイをする
- インタビューをする
- 現場に没入する
- 個に迫る
外化の具体的な行動例は以下。
- 言語化する
- 「Why so?」を繰り返す
- 習慣的に言語化する
雑感
クラスメソッドは人々の創造活動に貢献するため、情報発信を文化の一つにしています。
この情報発信の行動は外化の活動として解像度を上げる手段を兼ねていそうです。
第5章 課題の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
「広さ」「構造」「時間」の観点で課題の解像度を上げる方法について。
- 広さ
- 前提を疑う
- 視座を変える
- 体験する
- 人と話す
- あらためて深める場所を決める
- 構造
- 分ける
- 比べる
- 関係づける
- 省く
- 質問をする
- 構造のパターンを知る
- 時間
- 変化を見る
- プロセスやステップを見る
- 流れを見る
- 歴史を振り返る
雑感
課題の解像度を上げることは軽視されやすい活動であると考えています。
一方、第4章の説明にあったように、課題への理解こそ重要です。
「なんとなく問題っぽい。たぶんあの解決策がよいと思うから、やろう」
そんな意思決定は珍しくないのではないでしょうか?
- その課題が本当に解決に値するものなのか?
- そもそも存在しているものなのか?
これらを把握する意味でも、上記にあるような方法によって解像度を高める必要があります。
第6章 解決策の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
良い解決策には3つの条件がある。
- 課題を十分に解決できる
- 合理的なコストで解決できる
- 他の解決策よりも優れている
「深さ」「広さ」「構造」「時間」の観点で解決策の解像度を上げる方法について。
- 深さ
- 行動可能な単位までHowを問う
- 専門性を磨いて、新たな解決策に気づく
- 手で考える
- 体で考える
- 広さ
- 使える道具を増やす
- 外部資源を獲得する前提で広げる
- 探索に資源を割り当てる
- 解決策の真の意味を考える
- 構造
- 解決策の構造はシステム
- 解決する範囲を決める
- 構造のパターンを当てはめる
- 新しい組み合わせを生み出す
- 時間
- 最適なステップを見出す
- シミュレーションする
- 好循環を作り出す
- 長期の視点で考えて、時間を味方につける
雑感
課題の解像度に比べて解決策の解像度は高い人が多い用よう思います。
なぜなら、通常仕事の経験は個別の解決策を担当することが多く、熟練度が高まりやすいためです。
だいたいこんな感じでしょう。
- 解決策の一部を言われたまま担当する
- 解決策の一部の進め方を含めて担当する
- 解決策の全体の進め方を含めて担当する
- 課題の見極めを含めて担当する
そのため、普段から課題の見極めも含めて担当していない立場だと課題の扱い方に不慣れで大雑把に扱いがちです。
一方で、本来課題の見極めが必要となる立場でもより上位の方針に従うだけの環境になっていると、解像度が高まりにくくなります。
第7章 実験して検証する
ここまで扱った課題と解決策はあくまで自身が考えた仮説である。
仮説は検証することが必要であり、仮説を検証する行動は実験である。
第8章 未来の解像度を上げる
課題は未来の理想と現実のギャップである。
課題の解像度を上げるためには、未来の理想を考える必要がある。
どのような未来にしたいのか、という意思が問われる。
まとめ・感想
課題と解決策の解像度についてまとめた書籍「解像度を上げる」についてまとめました。
特に課題の解像度を上げることは重要であり、一方で解像度が高まっていない状況をよく見かける対象でもあります。
課題の解像度を上げ、意思決定の質を高めることは組織活動の質を大きく高めることにつながるため、この書籍で語られているような内容を一つずつ着実に身に着け、組織全体で解像度を高める能力を高めていきたいところです。
おまけ - 解像度向上のための書籍執筆について
解像度を上げる一つの方法として「本を書く」というのがあると思っています。
一般的に、商業書籍を執筆するのはハードルが高めです。また、技術同人誌でも一定のハードルがあります。
一方で、ZennのBookは普段Markdownで技術ブログを書く延長線で行うことができます。