キャリアコンサルティングの基本「クライエント中心アプローチ」とは
こんにちは。エンプロイーサクセス部の徳山です。
昨年、キャリアコンサルタントの資格を取得したのですが、出産・育児に追われている間にお勉強したことがぼちぼち記憶からサヨナラしてしまっていることに「おっと、このままではいかん」と思い、再度インプットするためにもキャリアコンサルティングに関わる理論や手法をブログで書いていこうと思い立ちました。
今回はキャリアコンサルティングの基本中の基本だと個人的に思っている「クライエント中心アプローチ」について書いていきます。
余談ですが、キャリアコンサルティング界隈ではクライアントではなく、クライエントという表現が主流だそうです。
IT技術の話ではないのですが、
- キャリア理論や対話手法に興味のある方
- 1on1等メンバーとのコミュニケーションをとるうえお悩みを抱えていらっしゃる方
- ちょっと息抜きにIT技術以外の話も読んでみるか!という方
がいらっしゃいましたら是非ご一読くださいませー!
クライエント中心アプローチとは?
クライエント中心アプローチはカール・ロジャーズによって創始された心理療法です。
ロジャーズ以前はカウンセラーがクライエントに「こうしたら?ああしたら?」という風に適切な指示や提案を行う指示的アプローチが主流でした。 そんな中で、ロジャーズは指示的なアプローチでは一時的な効果しか望めないとしました。
確かに、人にいわれてやることってその時しかやらないこと多いですよね(私だけ?)
そんな指示的アプローチに対して、ロジャーズはざっくり意訳すると「人間は自らの力で課題を捉え、状況を変化させることができる」と考え、指示を与えずにクライエント主導でカウンセリングを進める「クライエント中心アプローチ」を開発しました。
人は自己認識(理想的自己)と現実(現実的自己)のギャップが大きくなると、不安定な状態や問題行動を起こしやすくなると考えられています。
クライエント中心アプローチはそのギャップにクライエント自身が気づくよう促し、ギャップを解消していくことを目的としたカウンセリングアプローチとなります。
最も重要な3つの基本的態度
クライエント中心アプローチを行うにあたって、最も重要なのが以下の3つのコンサルタントの態度です。
- 受容的態度
- 共感的理解
- 自己一致
受容的態度
受容的態度とは、クライエントを無条件に肯定的に受け止めることです。
コンサルタントの価値観は一旦置いておいて、クライエントのどの側面にも肯定的な関心を向けることが大切になります。
たとえ、クライエントが矛盾したことや考えに多少の甘さを感じることを言っていても、そういうクライエントごと受け止めていく態度が重要です。
共感的理解
共感的理解とは、クライエントが感じている世界をあたかもクライエント自身であるかのように感じ取ることです。
ただ、「あたかも」という性質は見失わないことが重要です。
なぜなら、クライエントとの距離感を見失うと感情的になって合理的なアプロ―チが難しくなってしまうからです。
コンサルタントの受容的態度と共感的理解があってはじめて、クライエントは「この人は私を大切にしてくれる、理解してくれる」と感じ、徐々に心が開いてくるのです。
ここがうまくいかないと、クライエントは心を閉ざして何も話してくれなくなっちゃいます。
自己一致
最後に自己一致とは「コンサルタントもありのままの自分を受け入れている」ということです。
どういうことかというと、自分の中に「クライエントに共感はするが、同感はできない」といった気持ちが流れても、そう感じる自分自身を受け入れるということです。 ちょっとわかりにくいですが、ここにおける共感と同感は違います。
同感は相手の考えに同意・賛成すること(自分の価値観が入る)であって、共感は自分がそう思っていなくても「あなたはそう感じたんですね」と受け止めること(自分の価値観は入らない)です。
クライエントに変化を起こす6つの条件
ロジャーズはクライエントに建設的な人格変化を起こすための6条件として次の項目を挙げています。
1.心理的接触(ラポール)
コンサルタントとクライエントに心のつながりが生じていること
2.不一致
クライエントは理想的自己と現実的自己の間とのギャップが大きい不一致の状態で心理的に不安定な状態
3.一致
コンサルタントは安定しており、ありのままの自分でいられる状態
4.無条件の肯定的配慮・受容
コンサルタントはクライエントのそのままを無条件に肯定的に受け止めること
5.共感的理解
クライエントの見方・感じ方に共感的理解して、クライエントに伝える努力をしていること
6.受容と共感の伝達
コンサルタントの無条件の肯定的配慮・受容と共感的理解がクライエントに伝わっていること
変化を起こすためにコンサルタントがすべきことのほとんどは先ほどの3つの基本的態度ですね。
基本的態度のパワーおそるべし!
あと、1のラポールを作ることは大大大前提で大切になります。
どうやってそのラポールつくる?ってところなのですが、「視線の合わせ方」「身体言語」「声の調子/質」「言語的追跡(相手の言ったことに留まり、話題を飛躍させない)」といった、クライエントの話を聞くことに重点を置いた技法が有効になってきます。
これはアイビィのマイクロカウンセリング技法になってくるのですが、また別の時にお話ししましょう。
ざっくりいうと、とにかくクライエントの話をしっかり聴くことがラポールを作る土台になります。
以上がロジャーズのクライエント中心アプローチでした。
話をしっかり聞いて、肯定・共感しながら相手に気付きを与えていくって本当に難しいですが、これができれば良い1on1ができる一歩になるかもですね。
余談 / 傾聴とは
傾聴っていうと「静かに黙って相手の話を聞くこと」だと思われがちですが、英語ではActive Listeningと訳されます。 「積極的に話を聴く」という意味ですね。ただ、矢継ぎ早に質問をするという意味ではありません。
相手の感じている世界に関心を向けて、丁寧に心を込めて話を聴く、といった意味になります。
傾聴の要素には言葉だけではなく、声の調子・間・アイコンタクト・表情・姿勢といった非言語コミュニケーションも含まれます。
もし、1on1がうまくいかないと悩んでいる方がいらっしゃるのでしたら、こういった非言語コミュニケーションに気を配ることから始めるといいかもしれないですね。