適応を支える役割

適応を支える役割

新しい環境に適応する人を迎え入れる人に関して社会化エージェントの概念を元に整理します。
Clock Icon2024.07.19

こんにちわ。組織開発 がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。

入社・異動・役割の就任など、新たな環境・役割に適応するためにはオンボーディングが必要です。
オンボーディングは知識面のコンテンツを揃えることや、研修を実施するなどの方法もありますが、迎え入れる人が果たす役割も重要です。

この記事では、新しい環境に適応する人を迎え入れる人に関して社会化エージェントの概念を元に整理します。

社会化エージェントとは?

社会化エージェントAgents of socialization ) とは、個人が社会の価値観、規範、行動様式を学び、社会の一員としての役割を習得する過程において、影響を与える主要な人物や機関を指します。

社会化エージェントは入社・異動・役割などにおける補助の役割だけではなく、社会における様々な状況での類似の役割を表す広い概念ですが、この記事では会社での活動における適応を補助する役割に絞って掘り下げます。

社会化エージェントの必要性

適応において、知識やスキルに関する座学コンテンツだけではなく、社会化エージェントによる支援が重要です。理由は以下の通りです。

  1. 実践的なサポートとフィードバック
  2. 組織文化や価値観の理解
  3. 社会的サポートとネットワークの構築
  4. 問題解決能力の向上

1. 実践的なサポートとフィードバック

新しい役割に就いた社員が実際に業務を進める中で、上司やメンターから直接フィードバックを受けることで、座学では得られない具体的な改善点や成功事例を学ぶことができます。

2. 組織文化や価値観の理解

メンターや同僚との日常的な交流を通じて、組織の文化や価値観、非公式なルールを学ぶことができます。

3. 社会的サポートとネットワークの構築

新入社員が同僚や上司と良好な関係を築くことで、困ったときに相談できるネットワークを形成することができます。

4. 問題解決能力の向上

新たな環境や役割における日常の業務で発生する問題に対して、メンターや上司と一緒に解決策を考え、実行していく経験を積むことができます。

社会化エージェントのバリエーション

入社・異動・役割の就任に関わる社会化エージェントには以下のようなバリエーションがあります。

  1. 直属の上司
  2. メンター
  3. 研修講師
  4. 同僚

直属の上司

直属の上司が新しい役割や業務の期待事項を明確にし、適切なフィードバックを提供します。

メンター

経験豊富な社員がメンターとして新入社員や異動した社員に対してアドバイスやサポートを提供します。メンターは業務の進め方や組織文化についての理解を深める手助けをします。

研修講師

例えば、マネージャー就任時の研修を行う研修講師が新任マネージャーの質疑応答に詳細に答えたり、マネージャーの活動を開始したあとの相談にのるような手助けをします。

同僚

同僚は日常業務での協力や情報交換、社会的サポートを提供します。

社会化を阻害する振る舞い

社会化エージェントとは逆に、適応を阻害するような振る舞いには以下のようなものがあります。

  1. 不適切な上司やメンター
  2. 組織文化の不一致への対応
  3. 不明確な役割と期待
  4. 過度にネガティブなフィードバック

1. 不適切な上司やメンター

上司やメンターからのサポートが不十分であったり、誤った情報を提供した場合、適応が難しくなります。

例えば、そもそもメンターになる人自身が組織文化に沿った考えをもった人ではない場合、新しい人のメンターとしては好ましくない人選ということになります。

2. 組織文化の不一致への対応

新入社員の価値観や行動が組織の文化と合わない場合に、振る舞いの違いを攻撃すると適応が難しくなります。

すべての人が新しい環境の文化と近い価値観を最初から持っているとは限りません。以前の環境で培った価値観との違いを伝え、前向きに新しい環境に向けた変化を促していく必要があります。

3. 不明確な役割と期待

役割や期待が明確に伝えられない場合、新しい社員がどのように業務を進めれば良いか分からなくなります。

なお、ある程度難易度の高い専門家やマネジメント業務を担当する人を迎え入れる場合は難易度が高くなります。なぜなら、こういった立場の人が担当する業務は、すべての期待が具体的で詳細とは限らず、一定の曖昧さを含み、ある程度の抽象度を保った粒度での期待に対する認識合わせをする必要があるためです。

その意味では、一定の曖昧さを持つ期待について話し合える人の採用時の選考、異動時の受け入れ選考、役割就任の判断が必要、という意味では適応段階の課題というよりは、合否判定の課題になります。

4. 過度にネガティブなフィードバック

適応のためには、改善を促すための建設的なフィードバックは必須です。一方で相手が前向きに受け入れにくいような否定的な伝え方であったり、攻撃的な伝え方をすると本来は適応のために必要な薬となるはずのフィードバックが毒にもなりえます。また、伝え方だけではなく、伝える前提としての信頼関係も必要です。

まとめ

新しい環境に適応する人を迎え入れる人に関して社会化エージェントの概念を元に整理しました。

適応する人自身が変化を受け入れるスタンスや実際に変化に適応するための行動をとれることは重要です。一方で、すべての人が自分だけで変化に適応できるような超人ばかりとは限りません。新たな環境や役割に迎え入れると決めた人がしっかりと環境や役割に適応できるように、社会化エージェントとなる人たちで支え、適応の成功率を高めましょう。

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